リハビリテーションと私の軌跡

日々の臨床のキロク

QOLの向上とは?

療法士の方であればQOL(生活の質)をテーマにしたグループワークやセミナーに参加されたことが一度はあるのではないでしょうか。

QOLを向上させるために私たち療法士が考え、できることは何なのだろうか?」といわれた時、皆さんだったらどう考えますか?

 

友だちと喫茶店でお茶しながらお話ができる

温泉旅行に行ける

カラオケができる

飲み会に参加できる

フットサルができる

ボランティア活動ができる

音楽フェス(ライブ)に行ける

 

こういったことがよく挙げられるのではないかと思います。趣味活動や生きがい等と言い換えられる内容ですね。hopeとしても聴取しやすく、頻度も多いです。

これらの内容は間違いなくQOLの向上に繋がると思います。ただ、私はこれだけではないと考えています。

例えば友だちと喫茶店でお茶しながらお話ができる、飲み会に参加できるを考えてみましょう。どちらも一般的には外出することをイメージするため屋外歩行(車椅子なども含む)の獲得などが目標に上がりやすいのではないかと思います。ADLの自立度が高い方の場合はもっともな内容です。ですがそれは少数であり、実際はADLに多分に介助や何らかの支援が必要な方が多いですよね。そうした方々、例えば摂食や着替え、歯磨き、トイレでの排泄、もっと言えばベッド上での体位交換などに不自由を感じていらっしゃる方々においては、先述したQOLの考え方は二手も三手も先のことのように思います。ですから私がQOLにおいて重要だと思うことは、以下の通りです。

 

①むせたりせずに美味しく食事ができる

②安らかに十分な睡眠をとることができる

③出来るだけトイレに行って排泄ができる

これらを可能にする機能的な臥位・座位・立位の獲得に向けてアプローチする

 

茶店でお茶をするにも飲み会でつまみを片手に生ビールを飲むにも、安楽に摂食できる身体状態に整っていることが大前提です。座位を保持するのに手の支えが必要であれば大変ですよね。夜に眠れなければ精神的にも疲弊を来しますし、日中の倦怠感やらで活動量低下に繋がるかもしれません。排泄行為は1日の中で必ず複数回は行わなければなりません。ベッド上で行うならばわずかでも体位交換が出来ること、トイレで行うならベッド上から起き上がってトイレに向かって更衣をして…といったように一連の行為過程の一つ一つを考えなければなりません。こうした基本的な行為を非常に努力的に行い続けることはご本人も、そして介助する方も大変です。先の目標を据えておくことは必要です。ただし、患者さまにとってはもっともっと身近なところで大変な思いをされているかもしれません。ヒトの生活行為活動の基本的な部分がより上位の目標、その人らしさの復権へと繋がっていくのだという視点を持って評価・介入を行っていく必要があるのではないでしょうか。