リハビリテーションと私の軌跡

日々の臨床のキロク

【姿勢の評価】背臥位【第1回】

本日からは、評価の基本ともいえる各姿勢の特性についてまとめていこうと思います。まずは背臥位です。

背臥位は、身体の各部位が常にベッドや床のような支持面に支えられているため、安楽かつ非常に安定しているということが理想的です。それに加えて、背臥位という姿勢は続く寝返りのような抗重力姿勢の開始姿勢ともいえます。つまり、幅広い支持基底面かつ低重心、従重力的なこの姿勢において、姿勢筋緊張が最適化されており、安楽でいられるということが、次々に続く姿勢変換の基本として重要であると言い換えることができます。その最適化された姿勢筋緊張があるからこそ、続く抗重力姿勢への姿勢変換(動作)においても過剰な努力性を伴うことなく、非常に滑らかに協調された動きとして表出されてくるのです。
頭部や四肢はリラックスして支持面に置かれていることが理想的です。しかし、臨床場面では、こうした姿勢特性があるにも関わらず、異常なまでに姿勢筋緊張を高めてしまっている様子が多く観察されます。たとえば、ベッド端にしがみつくように手で掴んでいたり、頭頚部を伸展させたり、手掌や踵部で押し付けて肩や腰を浮き上がらせたりする必要は本来はないのです。リラックスした姿勢であるにも関わらず、眉間に皺を寄せるように表情が強張っていたり、どこか息苦しそうに呼吸をしていたり、常に身動きをしてしまい落ち着かない様子なども挙げられます。こうした内容が観察されたら、患者さまへの問診も交えつつ、「なぜ?」を掘り下げていきましょう。そして、背臥位で観察された特徴が、他の様々な姿勢や姿勢変換においても通ずる部分がないかを確認してみてください。例に挙げると、背臥位で頭頚部や上肢を支持面に押し付けている患者さまは、寝返りをして起き上がろうとする際に伸展パターンでのけ反ってしまう方が多く観察されます。立ち上がりでは支持物を引っ張らないと立てず、立位保持では手を離したら倒れてしまうなどです。各姿勢を通して共通する部分が多ければ多いほど、問題点として優先順位は高くなります。クリニカルリーズニングの手順の一考となれば幸いです。