リハビリテーションと私の軌跡

日々の臨床のキロク

最大抵抗への固執

患者さまや利用者さまへリハビリテーションを行っている際、「そんなに力入れなくてもいいのになぁ」と思ったことはないでしょうか。

患者さまや利用者さまの多くは、ベッド上で寝返ったり起き上がる際にはベッド柵を思い切り握りこんでいたり反り返るように伸展していたり、座っているだけにも関わらずひどく姿勢は非対称性を呈して手で支持していないと今にも倒れてしまいそうです。

これらの現象を体験するのに分かり易い例をお示しします。ベッドからどちらか一側半身を出して、ぎりぎり床面に半身が着かないところで落ちないように踏ん張ってみてください。この際、難しいですがベッドから出した半身でバランスを取ってはいけません。すると、ベッドに残した半身にはひどく力が入って何とか落ちないようにします。この状態が、患者さまや利用者さまにおいて、ベッド上で起きていると考えてみてください。ベッド上に全身が支えられているのにも関わらず、です。これを最大抵抗への固執といいます。片麻痺例をイメージしてみると、実際にはそこに麻痺側半身があるはずなのに、ミスマッチが生じているのです。このような状態を私たちセラピストが見逃してしまうと、患者さまや利用者さまは使いやすい非麻痺側半身を過剰に使用し、一方麻痺側半身の不使用がより強化されていきます。すると麻痺側半身には然るべき感覚入力が減少し、どんどん左右半身の解離が生じていくことで、非麻痺側半身の過剰努力が更にパターン化していくことになります。

患者さまらは急激な身体状態の変化に混乱し、先行きの見えない不安などに襲われ、それでも何とかしないと・・・とお考えになるのだと思います。すると使える手足を力一杯に使用して何とか目的を果たそうとする。ですから、急性期のリハビリテーションにおいては特に、関節可動域拡大や筋力強化を否定するわけではありませんが、前述の過剰努力によるパターン化及び一側または部分的な不使用に対するアプローチが重要となってくると考えています。実際、回復期に入院された患者さまを見ると、どのようなリハビリを受けてきたかを垣間見ることが出来ます。ガシガシ関節可動域や筋力強化だけをベッド上で受けていた患者さまよりも、重力環境下に患者さまを適応するよう促すようなアプローチを受けていた患者さまの方が生活機能の向上に結び付きやすいと感じています。付け加えておきますが、ただ無理矢理に離床させればいいというわけではありません。可及的にリラックスした状態で適応を促すことが重要だということです。機能的な部分を局所的にしか捉えられていないと、患者さまや利用者さまの生活機能を評価することは不可能だと考えています。木を見て森を見ずではいけません。リハビリテーションを行う際には多面的に捉えることが私たち療法士には強く求められているのです。

 

患者さまのために、これからも精進していきたいと思います。今回は以上です。